みなし贈与のリスクが潜む、相場より安い不動産売買

「安いからお得」と思う前に、税務上の見え方も少しだけ確認してみましょう

相場よりかなり低い価格で不動産を売買すると、あとから”みなし贈与”として扱われる可能性があります。

価格が安いと、つい「得をした」と感じますが、税務では別の見方をされることがあります。

不動産の売買では、売買価格が時価と比べて著しく低い場合に、税務上の確認が必要になることがあります。見た目は売買でも、実質的には一部を無償で受け取ったのに近いと判断されるケースがあるからです。

たとえば、時価が1,000万円の物件を300万円で購入できたとします。見た目には700万円も安く買えたように見えますが、その差額がそのまま「得」とは限りません。税務上は、価格差の理由や取引の実態を踏まえて、贈与にあたる部分がないかどうかが確認されます。

もちろん、安いこと自体が悪いわけではありません。老朽化が進んでいる、再建築に制限がある、立地条件に難がある、修繕費がかかる、権利関係が複雑であるなど、価格が下がる理由がきちんとある物件もあります。こうした事情を説明できるのであれば、低価格にも十分な根拠があると言えるでしょう。

注意したいポイント

「価格が安い」ことと「税務上問題がない」ことは同じではありません。安さの理由が説明できるか、そして相場との差が不自然に大きくないかを確認しておくことが大切です。

特に、親族間売買や知人同士の取引では、第三者から見て不自然に安いと受け取られることがあります。その場合、売買当事者が合意していても、税務上は確認対象になることがあります。

「売主が納得しているなら問題ない」と思われるかもしれませんが、税務では当事者の気持ちだけでなく、客観的に見て適正な価格かどうかも重視されます。つまり、双方が合意していることだけでは安心とは言い切れないのです。

価格が安い理由を、あとから第三者にも説明できるかどうかが大切です。

ここで大切なのは、不動産の購入価格そのもの全体に税金がかかるわけではないという点です。税務上の確認対象になりやすいのは、相場価格との差額、つまり本来の価値よりも安く取得できた部分です。

たとえば、本来1,000万円の物件を300万円で買った場合、差額の700万円が問題になりうる金額として見られることがあります。ただし、その700万円がそのまま全額課税されるとは限りません。実際には、物件の状態、取引条件、評価方法などを踏まえて、どの部分が贈与にあたるのかが個別に判断されます。

つまり、安く買えた金額のすべてが自動的に課税されるわけではないものの、相場との差が大きいほど、税務上の確認が必要になりやすいのです。

たとえば、相場と購入価格の差が700万円あるケースでは、そのうちどこまでが合理的な値引きなのか、どこからが贈与に近いのかが問題になります。差額が大きくなるほど、「なぜこの価格なのか」を説明する重要性も増します。

贈与税は、基礎控除後の課税価格に応じて税率が変わります。下の表は、その考え方をイメージしやすくしたものです。たとえば、課税価格が200万円なら約20万円、400万円なら約55万円、1,000万円なら約275万円、3,000万円なら約1,250万円が目安になります。このように、課税価格が大きくなるほど税率も上がり、税負担も重くなっていきます。

贈与税の累進課税

基礎控除110万円の控除後の課税価格に応じて、税率と控除額が変わります

基礎控除後の課税価格 税率 控除額 贈与税の目安
200万円以下 10% 0円 約20万円
300万円以下 15% 10万円 約27万円
400万円以下 20% 25万円 約53万円
600万円以下 30% 65万円 約127万円
1,000万円以下 40% 125万円 約306万円
1,500万円以下 45% 175万円 約546万円
3,000万円以下 50% 250万円 約1,320万円
3,000万円超 55% 400万円 約1,600万円超

こうして見ると、相場よりかなり安く買えた場合に、その差額が税務上どのような意味を持つかがイメージしやすくなります。「数百万円安く買えた」と思っていても、見方によってはその一部が贈与に近いものとして扱われ、思わぬ税負担につながることがあるのです。

不動産は「安いかどうか」だけでなく、「その安さに自然な理由があるかどうか」がとても大切です。

特に、相場より極端に安い物件を見つけたときは、その背景をよく確認しましょう。事故物件、再建築不可、接道条件の問題、老朽化、権利関係の調整が必要な土地などは、価格が下がる理由として十分ありえます。逆に、明確な理由が見当たらないのに相場より大きく安い場合は、慎重に検討したほうが安心です。

また、売主側の事情で価格が下がることもあります。早く現金化したい、相続整理を進めたい、維持管理の負担を減らしたいなどの事情があると、相場より低い価格になることがあります。ただし、その事情があるからといって、税務上も自動的に問題ないとは限りません。

そのため、安値の物件を検討するときほど、価格の妥当性、物件の状態、将来の維持費、税務上の見え方をあわせて確認することが大切です。「激安だから得」と飛びつくのではなく、総合的に見て納得できるかを考えることが、後悔しない購入につながります。

安く買う前に確認しておきたいこと

  • 近隣の成約事例や売出事例と比べて、価格に大きな差がないか
  • 建物の老朽化や修繕費など、価格が下がる理由があるか
  • 再建築や接道など、法的・物理的な制約がないか
  • 親族間や知人間など、関係性による特別な配慮がないか
  • 「安くしてもらった理由」を第三者にも説明できるか

少しでも不安がある場合は、税理士や不動産会社などの専門家に事前に相談しておくと安心です。特に、親族間売買や大幅な値引きがある取引では、あとから説明に困らないように準備しておくことが重要です。

補足

事例紹介


・不動産時価1500万円-購入価格50万円=差額1450万円(みなし贈与税額524万2500円)

・不動産時価800万円-購入価格200万円=差額600万円(みなし贈与税額93万0000円)

・不動産時価250万円-購入価格33万円=差額217万円(みなし贈与税額10万7000円)

・不動産時価3億円-購入価格2000万円=差額2億8000万円(みなし贈与税額1億5119万5000円)


※上記は一般的なイメージです。実際の税額は、贈与の時期、評価方法、特例の有無、受贈者の状況などによって変わります。

著者: 浦上 • 2026-06-20