熱海パサニアクラブ22階|入口は27階。4,200万円のリノベ住戸は本当に買って大丈夫?

物件検証

本当に買って大丈夫?|Athletic 物件検証 第4回

入口は27階、住まいは22階。
熱海パサニアクラブという「斜面の街」を買う。

熱海の山の斜面に、白い住戸が幾重にも積み重なる。熱海パサニアクラブの外観は、普通のマンションというより、山肌に造られたもうひとつの街のようです。

そこで今回確かめたいのは、「熱海を代表する建築に住む」という魅力と、22階・4,200万円という価格が見合っているのか、ということ。眺望や内装はもちろん、特有の動線、温泉の契約、実際の維持費まで、買う側の目線で考えてみます。

今回の住戸|22階・4,200万円
1LDK / 専有面積93.36㎡(壁芯) / バルコニー28.11㎡ / 南東向き / 1989年10月築 / 2021年7月スケルトンフルリフォーム済み / ペット飼育可(細則あり)
※物件情報は2026年10月確認時点。販売状況・費用・規約は変更される場合があります。

01|このマンションは、なぜ「22階」に驚かされるのか

多くの高層マンションは地上の1階から上へ向かいます。しかし熱海パサニアクラブの正面玄関は27階。山の斜面に沿って約28度の勾配を生かした、地上28階建てのひな壇状の建築だからです。

ロビーの建築模型を見ると、その発想の大胆さがよく分かります。斜面を無理に平らにするのではなく、斜面そのものを建築の形にしている。27階側から入館し、斜行エレベーターで住戸の階に移動する。この体験は、一般的なタワーマンションでは味わえません。

建物名の「パサニア」は常緑樹に由来します。分譲時には各住戸のバルコニー花壇に若木が植えられたとも紹介されています。白い建築と緑を重ねる構想には、当時のリゾート開発の夢が感じられます。

ただし、独創的な設備には確認すべきこともあります。斜行エレベーターは毎日の足であり、将来も維持・更新していく設備です。現地には東西2系統の表示があります。撮影時の掲示では、19時〜20時30分は一方を各階のごみ収集に使用するため、西側エレベーターの利用を案内していました。これは旅行先の珍しい設備ではなく、実際の生活動線なのです。内見では景色を見る前に、住戸までの経路・待ち時間・運用ルールを自分で確かめたいところです(現在の運用は要確認)。

02|22階の室内には、別の世界観がある

建物の歴史を感じる共用廊下を抜けて室内に入ると、印象が一変します。白い光沢のある床、黒い天井、ガラスと金属の反射。2021年にスケルトンからフルリフォームされたこの住戸は、リゾートマンションにありがちな「少し豪華な別荘」とはかなり違います。

まず目を引くのは、空間の中心にあるステンレス製のアイランドキッチン。調理する場所であると同時に、インテリアの主役でもあります。海を背景に食事を楽しむ時間が、日常の風景として想像できる造りです。

93.36㎡で間取りは1LDK。部屋数を増やすよりも、広がりと素材感を優先した構成です。寝室側にも収納が設けられています。一方で、家族それぞれの個室や独立した仕事部屋が必要な人には、1LDKという割り切りが合わないかもしれません。

「広いから暮らしやすい」とは限らない。自分の家具、荷物、生活習慣に合うか。そこまで想像してこそ、このリフォームの価値が見えてきます。

03|海を見るための窓か。海と暮らすための窓か

この住戸の魅力は、22階という数字だけではありません。南東向きの角住戸で、28.11㎡のバルコニーを備え、相模湾と熱海の街並みを望みます。熱海海上花火大会を鑑賞できると案内されている点も、リゾートとして魅力的です。

写真を撮った日は、空に雲が広がっていました。それでも、海岸線と海の広さ、山の緑が一緒に見える眺望には独特の落ち着きがあります。晴れた日の青だけが、熱海の風景ではないのでしょう。

さらに、この住戸は浴室からも海を望める造りです。リビングの窓から海を見るのと、湯船で海を眺めるのとでは、体験の質が違います。ただし、浴室があることと、温泉が現在使えることは別問題。この点は後ほど詳しく確認します。

04|4,200万円は高いのか。同じ建物の価格が教えてくれること

中古マンションの価格を、専有面積だけで判断することはできません。熱海パサニアクラブは特にその傾向が強い建物です。例えば、2026年10月に公開されている別住戸を見ても、募集価格には大きな幅があります。

比較対象専有面積募集価格㎡単価(概算)
今回・22階/1LDK93.36㎡4,200万円約45.0万円
別住戸・11階/2LDK94.28㎡1,980万円約21.0万円
別住戸・17階/1LDK93.36㎡4,980万円約53.3万円

※同一住戸の過去価格比較ではありません。別々の住戸の「募集価格」を並べたものです。成約価格や市場相場を示すものではなく、室内の仕様・眺望・条件・時点が異なります。

ここで重要なのは「22階だからこの値段が正しい」と単純化しないことです。リフォームの仕様、眺望、室内の使い勝手、階数、所有者の売却事情などによって価格は変わります。今回の住戸は、スケルトンリフォームの完成度に価値を感じる人に向いた一室です。

反対に、内装は自分で作り直したいという人なら、別の選択肢が合理的な場合もあるでしょう。4,200万円の評価は、比較対象の値札ではなく、現地で感じる価値と購入後の支出を合わせて行うべきです。

05|「管理費+修繕積立金」で維持費は終わらない

リゾートマンションで見落としたくないのが、毎月の支出です。この住戸の掲載額は管理費29,893円、修繕積立金12,700円で、合計42,593円/月です。

ただし、同じ22階住戸を掲載する別の公開資料には水道料6,146円/月も記載されています。この金額を加えると、月額48,739円、年間584,868円になります。水道料の実際の請求条件と内訳については、契約前に照合する必要があります。

項目月額
管理費29,893円
修繕積立金12,700円
水道料(他社掲載額・要確認)6,146円
合計(上記すべてを含む場合)48,739円

さらに、別運営の海音クラブへ任意加入し、他社資料にある月額30,800円が適用されると仮定すれば、上記の月額費用と合わせて79,539円/月、954,468円/年となります。加入時には別途入会金や預託金も必要です(預託金の返還条件は要確認)。掲載媒体によってクラブ費用の記載に差があるため、これはあくまで条件付きの試算です。

※固定資産税・都市計画税、電気代、火災保険料、駐車場代、借入返済額などは含みません。水道料・クラブ費用を含め、管理組合資料・契約条件による最終確認が必要です。

室内は2021年に大きく新しくなりました。しかし建物そのものは1989年竣工です。斜行エレベーター、共用設備、外壁、防水などを今後どう維持するのか。リフォームされた専有部分と、これからも修繕が必要な共用部分は、切り分けて評価する必要があります。

06|「温泉もプールも付いている」という言葉を、そのまま受け取らない

熱海パサニアクラブで紹介されている「海音(Mio)クラブ」は、マンションを所有すれば誰でも自由に使える共用設備とは異なります。戸別温泉の供給やクアハウスの利用は、別運営の海音クラブとの任意契約が前提です。クアハウス棟や温泉源泉地は、マンション管理組合の共有土地・建物ではありません。

では、実際に契約するといくらかかるのでしょうか。2026年10月に確認できる複数の不動産会社の掲載情報では、次の条件が案内されています。

海音クラブの条件公開資料の記載
加入形態任意契約
入会金550,000円(税込)
預託金1,500,000円
月額利用料30,800円(温泉・クア施設の利用に関する料金として案内)
加入時の必要資金2,050,000円(うち預託金150万円)

金額に相違があります。上表はロイヤルリゾート・伊豆太陽ホームなどの公開掲載情報に基づく参考額です。一方、Athleticの22階物件ページでは、入会金540,000円・月額30,240円・預託金1,500,000円と記載されています。どちらが適用されるか、最新の契約書面での確認が必要です。

月額30,800円とする場合、年間のクラブ利用料は369,600円。これは先ほどの管理費・修繕積立金などとは別に考える支出です。預託金150万円は入会時に必要な資金ですが、その返還条件や退会時の扱いは、現時点で契約書面を確認できていません。支払ったら必ず全額戻る、と想定するのは避けるべきでしょう。

ここで確かめたいのは、金額だけではありません。この22階住戸で新規契約できるか、温泉を実際に供給できる状態か、各施設の現在の営業・利用条件、解約・名義変更・預託金返還のルールまで、契約先に書面で確認することが大切です。設備の存在と、今日から使えることは同じではありません。

このほか、マンションの共用ロビーには図書スペースやキャッシュレス専用の小型店舗も確認できます。毎日の暮らしでは、華やかなリゾート設備と同じくらい、こうした身近な設備の使いやすさも価値になるはずです。

07|徒歩13分、ペット可、駐車場。暮らし方によって答えが変わる

物件情報には「熱海駅徒歩13分」とあります。ただし、現地は高低差のある斜面地。さらに、正面玄関は27階にあり、別運営施設側の入口とは利用条件やアクセス経路が異なります。地図上の駅徒歩分数だけで、毎日の移動の楽さは判断できません。

車で利用する場合は、月極駐車場の空き状況と、来客用駐車場の条件を確認したいところ。2026年10月に閲覧できる公開資料では月極駐車場に「空きなし」との案内があり、車が生活の中心となる方には重要な確認事項です。

ペットは飼育可能と案内されていますが、無条件ではありません。届出、頭数や大きさ、共用部での移動方法など、管理規約・飼育細則に従う必要があります。愛犬と暮らすつもりなら、契約前に飼育条件を確認しておくべきです。

08|購入前に「眺望」より先に確かめたいこと

魅力の大きな建物だからこそ、購入前の確認を省きたくありません。今回は特に次の点が重要です。

  • 動線:正面玄関から22階の住戸まで、実際に斜行エレベーターで移動する。混雑時やゴミ収集時間帯の運用も確認する。
  • 管理と修繕:重要事項調査報告書、長期修繕計画、修繕積立金残高、滞納、斜行エレベーターや防水工事の計画を確認する。
  • 眺望とテラス:室内の各窓からの見え方、風の強さ、排水、手すりや防水の状態、使用細則を確認する。
  • 設備と契約:温泉・海音クラブの契約条件、給湯方法、リフォーム設備の動作や保証範囲を確認する。
  • 立地と防災:斜面地のため、自治体のハザードマップと重要事項説明書で区域指定や避難経路を確かめる。ほかの公開物件資料には土砂災害警戒区域内との記載もある。
  • 暮らしの条件:駐車場の空き、ペット飼育細則、インターネット、日常の買い物動線を自分の利用スタイルで確認する。

現在、この記事の執筆時点では管理に係る重要事項調査報告書と長期修繕計画の実資料は確認できていません。したがって、修繕積立金の余裕や将来の修繕費の増減について、根拠なく評価することはできません。特に斜行エレベーターという特殊設備を抱える建物ですから、購入を本格的に検討する段階では、有料でも両資料を取得し、修繕履歴・積立金残高・将来の工事計画を確かめる価値があります。

結論|この住戸は、万人向けではない。だからこそ面白い。

22階・4,200万円の価値は、部屋数や㎡単価だけでは測れません。斜面と一体になった建築、海との距離感、ホテルのように大胆な1LDK、視線の先に海がある浴室。この建物とこの住戸でしか得にくい体験が確かにあります。

一方で、独特の動線、共用部の経年、斜行エレベーターの維持、温泉の別契約、毎月の支出は、見過ごせません。家族の個室が必要な方、駅までの移動を最優先する方、維持費を低く抑えたい方には、ほかの選択肢が合うこともあります。

「この景色と空間で暮らしたい」という気持ちと、「その暮らしを無理なく続けられる」という確認。その二つが揃うなら、熱海パサニアクラブ22階は、真剣に検討する価値のある一室です。

答えを急ぐより、まずは建物の中を歩き、22階の扉を開け、海と向き合ってみる。そこから自分自身の判断が始まるのだと思います。

熱海パサニアクラブ22階の物件詳細・内見相談はこちら →

※本記事は公開物件情報、取材時の現地写真、提供資料をもとに、購入時の着眼点を整理したものです。掲載の販売価格・条件・設備の利用状況・他住戸の募集情報は2026年10月確認時点のものです。確認できない事項は断定せず、契約前に最新資料等で確認してください。取引態様:一般媒介。

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